宮の杜




9、神輿


 古代、呪術力を持つ巫女(みこ)などを輿に載せて警ヒツ(=おーおーと声をあげる)の声とともに参進したであろうことが古文書などからうかがえます。海や湖沼での神輿を載せた舟遊びの神事。そして山法師たちが神輿を担いで京に直訴した記録等に始まり、鎮守神を神輿に遷し、氏子区域を氏子が担いで巡幸する習わしが受け継がれてきました。
 神輿の渡御(とぎょ)する道々にはすべて注連縄(しめなわ)を張り、掃き浄め、水を播き、各戸に提灯を下げたりしてご神幸に意を配りました。また二階等から神輿を見おろすことは不敬なこととして昔から戒しめています。
 年一度のご神幸に際し、神器庫から斎場に祀り、神輿洗の神事をして遷霊し、発輿(ほっこし)がすぐできるようお旅所に安置します。お旅所は神輿の参詣所ともなり、休憩所ともなりました。ともに町内のお留まりの場所でもあり担ぎ手の休憩所ともなりました。
 担ぎ手の身振体様として「わっしょい、わっしょい」が一般的です。地方によっては「どっこい、どっこい」「せいや、せいや」「そや、そや」「せや、せや」など土地柄をよく現しています。合いの手(=手拍子)、拍子木もそれぞれ地方色や郷土色を織り込んでいます。
 御神体を担ぎ、「振る」ことは「魂振り(たまふり)」と呼ばれる昔からの神事にも通ずるもので、神様の霊力がますます高められるのです。
 いま、レクリエーション化、パレード化する神輿まつりのなかで、神輿本来のご神幸の意義とその作法は失いたくないものです。
 


十二月

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