宮の杜




5、ヒモロギ


 神と竹かんむりに離と書いて「ヒモロギ」といいます。神霊の宿る神祇の中心、祭祀の対象として最も大切な重要施設と言えるでしょう。
 このヒモロギの語源と字義については、古来諸説があって一定しておりません。ただ、神霊の宿り給うところを、上代人はヒモロギと称し、また神座を「イワクラ」(磐境)と称したことは、日本書紀巻二の天孫降臨の段に「天津ヒモロギ」「天津磐境」の語が見えるのでわかります。もともと「ヒモロギ」は神霊の宿る樹木や岩又は山をさしていることは確かなことです。歴史的に見ると、この樹木・山がいろいろな過程を経て、やがてヤシロ(社)とかミヤ(宮)の神社建築へ発展していくという、ヒモロギを神社成立の基礎として捉える考え方があります。
 同時に神々のまします山林(神体山)そのものを「ヒモロギ」として神祭りをおこなっている「カンナビ(神奈備)山」の信仰も存在します。
 また「ヒモロギ」には、定められた霊域として神聖視する「聖域説」もあります。
 さて現在行われている地鎮祭・上棟祭・竣工祭などの祭祀では、「コモ」(薦)を敷いた上に祭壇を設け、まわりに常磐木・斎竹をめぐらし、中央に「サカキ」(榊・栄木)を立てて、ユフ(木綿)とシデ(幣)を取り付けこれを「ヒモロギ」とします。
 このように、「ヒモロギ」は神道祭祀の根本であり、祭儀の成立にとって欠かせない神聖なものとなります。

八月

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