宮の杜




18、しゃく


 しゃくは漢字ではコツと読みますが、字音が骨に通じるので、しゃくと読みならわしているのです。
 この頃は神社でしか見かけなくなりましたが、しゃくは本来の日本や中国の正装には付き物でした。西洋風に言うならば、背広にネクタイというようなものです。
 昔から衣紋(えもん)といって衣装をつけるにも、それなりの決まり事があります。タキシードには蝶ネクタイというようなものです。
 もしも狩衣(かりぎぬ)や斎服(さいふく)を着て、手に何も持っていないとすると少し変な感じがするものです。それくらいシャクを持つスタイルは、伝統にのっとっているといえます。
 また、シャクを右手に真っ直ぐに立てて持つことにより、姿勢を正すことの意味もあります。
 また、このシャクの裏側にメモを取って、備忘録としたこともあります。長い式典においては、進行を間違えないためにも、シャクが活用されたことは言うまでもありません。
 古代からの令制では、五位以上は牙シャクと規定されていましたが、「延喜式」では、牙の変わりに白木が許容され、以後礼服以外は全て、一位、柊(ひいらぎ)、桜、榊、杉などの木製となりました。



九月

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